医療技術が発達した今でも、すい臓がんの
癌の治療には、多くの場合、手術療法がとられます。その場合、
以前は転移や再発を防ぐために、癌の部分をリンパ節も含めて広範囲にわたって
取り除く方法が一般的でした。確かに、癌を完全に取り除き、治療することは大切です。
しかし、生活の快適さを重視する考え方、「QOL:quality of life」が普及するようになり、
手術後の生活の質を向上させるために、できるだけもとの機能を温存してQOLを
維持しようとする手術法に変わってきつつあります。
すい臓がんの場合、実際、手術が可能なのは30パーセントといわれます。
すい臓がんは症状が明白に現れないことから、気づいたときにはかなり進行しており、
手術できない状態にいたっていることが少なくないのです。また、
すい臓がんが進行すると、がん細胞が胆管や消化管を圧迫して閉塞性黄疸や
消化管閉塞という症状を引き起こす場合があります。
このような場合、すい臓がんそのものを治療するというよりも、QLOを維持するという
目的で手術をすることがあります。胆管と小腸、胃と小腸、小腸と小腸などをつないで
バイパスを作るのです。これにより、黄疸が改善し、食事が摂れるようになる、
といった改善がみられるのです。
その他、がんが進行して激しい痛みを伴う場合には、痛みを取り除くことを主眼とした
治療が行われます。痛みを伝える神経を切除する方法や、薬を注射して神経の緊張を解き、
痛みを和らげたりといった方法です。
これらの治療は、すい臓がんそのものの治療とはいえませんが、患者さんの生活の質を
維持し、改善するために重要なものです。
すい臓がんには特有の症状がないといわれる一方で、慢性すい炎の症状との類似性が
指摘されています。したがって、すい臓がんの診断を下すには、
それが慢性すい炎でないことを、また慢性すい炎の診断にはそれがすい臓がんで
ないことを明らかにすることが必須条件となります。
また、慢性すい炎の場合、発病後から禁酒を中心とする食生活をしっかりと自己管理
できれば、予後はさほど悪くないといわれます。しかし、0~5パーセントと、
わずかであるとはいえ、慢性すい炎からすい臓がんへと移行することもありますので、
慢性すい炎の発症初期に適切な治療を受けることが重要です。
突然、上腹部、特にみぞおちに激痛が走る、急性すい炎と異なり、慢性すい炎の場合は、
常に症状のあるものと、年に数回という頻度で急性すい炎のような発作を起こすものの、
その間はこれといった症状はない、という二つのタイプがあります。慢性すい炎の症状は、
病気の初期と、病気がかなり進行してしまった時期ではかなり異なります。
病気の初期には、上腹部の激痛があるのがふつうで、急性すい炎に似ています。
しかし病気の進行とともに痛みはかえって緩和します。代わって問題となるのは、
消化吸収障害や抑うつ症状です。消化吸収障害は体重の減少をもたらします。
症状自体は、すい臓がんと非常によく似ていることから、症状だけではいずれとも
識別できません。診断には超音波検査、Ⅹ線CTなどの画像診断法が必要となります。
特に、内視鏡的水管造影法とすい管造影法が有効とされます。
すい臓がん特有の症状といわれるものはありません。それどころか、まったく何の
症状もなく、いつのまにか、がんが進行し、そのほかの器官にまで影響が
およんではじめてすい臓がんの存在に気づいた、という例もあるほどです。
すい臓がんにこれといった症状が無い以上、因果関係は明確ではないとはいえ、
すい臓がんの症状とよく似ているといわれる、すい炎、特に慢性すい炎の症状について
理解しておき、そのような症状が現れたら、すい臓がんも疑ってみるという姿勢
をとるのが有効ではないでしょうか。
すい炎の症状としては、痛みについてあげられることが多いですが、
それ以外にも幾つかの症状があります。またそれらはすい臓がんの症状とも共通するものです。
急性すい炎では、ほとんどの場合、微熱を伴います。場合によっては高熱
(40度近いことも)を発する場合もあります。また、吐き気、嘔吐などの
消化器症状を伴うこともあります。
一方、慢性すい炎の場合は、病期が進んだ段階にいたると、
消化吸収障害からくる体重減少や、糖尿病なども現れます。また、慢性すい炎の場合、
反復的な激痛に襲われたり、持続的な鈍痛があるなど、痛みが長期化し、
精神的に抑うつ症状をきたすこともあります。
また、慢性すい炎によって二次的に糖尿病を発症している場合は、
糖尿病に気づいていても慢性すい炎に気づいていないこともあります。
糖尿病のための治療を適切に行い、自己管理もしているにもかかわらず血糖の
コントロールがうまくいかない、症状が改善しない、という場合、
ふつうの糖尿病とは違うかもしれない、と疑ってみる必要があるかもしれません。
どのような癌であれ、がんの治療には、早期発見が何よりも大切であることを
よく耳にします。しかし、すい臓がんは、早期発見が非常に困難な癌です。
その理由のひとつに、これといった特有の症状がないことがあげられます。
したがって、たとえ症状がなくても「すい臓癌の危険年齢」といわれる50代~70代には、
最低でも年に1~2回は検診を受けることが望ましいでしょう。
すい臓がんの症状としては、腹痛、体重減少、黄疸、耐糖能異常、
などが主にあげられます。しかし初期には無症状のことが多いのが現実です。
がんが進行すると、背部痛、腹痛、下痢などが生じます。
しかしこれはすい臓がんそのものの症状というよりも、がんがすい臓にとどまらず
周囲に広がってしまったことを示しているのです。したがって、
このような症状が出たということはすでに癌がかなり進行しているということです。
すい頭部といって、すい臓の右側のがんでは、皮膚や尿の黄染、
つまり黄色く染まる状態、で発症することもあります。
これは腫瘍が総胆管を閉塞して、黄疸が出たからです。
黄疸というのは、病気や疾患に伴う症状の一つで、身体にビリルビンが過剰に
存在することから、眼球や皮膚といった組織、あるいは体液が黄色く染まる状態をいいます。
また、特徴的な症状を示すものとして、「すい内分泌腫瘍」があります。この場合、
種々のホルモン・・・インスリン、ガストリン等・・・を分泌し、
低血糖や消化管潰瘍などを示します。
すい臓がんの検査には、
1.血液検査、
2.画像検査、
3.病理学的検査が行われます。特に、血液検査においては、
腫瘍マーカーと血中ホルモンを検査します。
血液検査
【1.腫瘍マーカー】
腫瘍マーカーというのは、癌の進行に伴い増加する
生体因子のことをいいます。多くの腫瘍マーカーは、健康な人でも血液中に存在します。
そのため、腫瘍マーカーが存在するからといって、それだけで癌の存在を
診断できるわけではありません。ただし、癌の患者さんの腫瘍マーカーを定期的に検査
することによって、再発の有無や手術で切除できなかった癌、
あるいは画像診断では見えないようなごく小さな癌が存在することを、
確実ではないものの、ある程度知るうえで有効な方法といえるでしょう。
【2.血中ホルモン】すい内分泌腫瘍がある場合、以下のホルモンが高値を示します。
●インスリン(インスリノーマで高値)
●ガストリン(ガストリノーマで高値)
●グルカゴン(グルカゴノーマで高値)
●VIP(WDHA症候群で高値)
インスリンは、主として炭水化物の代謝を調整するするホルモンです。
インスリンは血糖値を一定に保つうえで重要な働きをします。血糖値を低下させるために、
糖尿病の治療にも用いられています。インスリノーマとはすい臓に生ずる
インスリン分泌内分泌腫瘍です。80~90%が単発の良性腺腫です。
しかし、転移を伴う悪性腫瘍も5%程度存在することから注意すべきです。
発生場所は、体尾部が多く、全体の70~80%を占めます。
ガストリンは、主に胃の幽門前庭部に存在するG細胞から分泌されるホルモンです。
胃主細胞からのペプシノゲン分泌促進、胃壁細胞からの胃酸分泌促進、胃壁細胞増殖、
インスリン分泌促進、といった作用が認められています。
グルカゴンは、インシュリンとともに血糖値を一定に保つ作用をするホルモンです。
インシュリンとは反対に血糖値が下がって糖を必要とするようになったときに肝細胞に
作用してグリコーゲンの分解を促進する働きをします。
VIPは、消化管ホルモンのひとつで、「血管作動性腸管ポリペプチド」の略です。